(反応が良かったメールマガジンの記事を転載しています)
シリーズ3回目です。
「プロを目指すということ1」
「プロを目指すということ2」
これまで、
- 僕がプロについて書くことの免罪符 ^^
- プロの定義を自分なりに決めること
- プロに至るまではどうするか
について書いてきました。
最終回の今回は、
【プロになるための勉強】
について書きます。
* * * *
この記事の目次
「まずはきちんと勉強してから 映画を作ろうと思います」
一体、何度
この言葉を聞いてきたでしょう。
この
「きちんとした勉強」
とはどんな内容なんでしょうか。
このメルマガは最初、
2、30回くらいしっかり書いて
それで終わりにしようと考えていたんです。
僕が知っていることなんて、
そんなもんだと思っていたから。
ところが発行10年を超え、
いまだに続いています。
しかも、内容は長くなり続けている!
これ、なぜだと思いますか?
僕がずうっと、勉強(研究)を
続けているからなんですね。
映像表現は、時代とともに変化します。
以前は、シナリオの書き方といえば、
TVの2時間ドラマが話題に上がってた。
しかし、ネットの時代になり、
シナリオの位置付けは大きく変わっています。
カメラの選び方だってそう。
スマホも加わり、ドローンまで出てきて、
編集もアプリが加わった。
だから、プロになっても安心できません。
ビデオカメラのプロは、
スマホ撮影は詳しくないかもしれない。
編集のプロも、ユーチューブで
効果的に見せるのは苦手かもしれない。
先日、僕より10歳くらい上の
プロカメラマンと雑談していた際、
「一緒に撮影の勉強しませんか」と言われました。
もっと研究したいんですよね、と。
「まずはきちんと勉強してから
映画を作ろうと思います」
こういう発言をする人は多いんですが、 プロだって、めちゃくちゃ勉強(研究)熱心なんですよ。
やってもやっても、
次々と知りたいこと、試したいことが出てくる。
プロはそれを知っているから、
作りながら、勉強してます。
プロにとっての勉強とは、 「実際に試してみること」を指します。
僕もこのメルマガで、
『知っていることだけ』
書いてるんじゃないんです。
『最近知ったこと』
『ちょっと前に試したこと』
もいっぱい含まれてます。
新しい機材を知ったら、
借りたり買ったりして、
時間見つけてすぐ外にテスト撮影に行きますから。
もっと書きましょう。
「まずはきちんと勉強してから
映画を作ろうと思います」
こういう発言をする人は、
じゃあ本当に勉強するかというと・・
「こうやったらプロになれます」
「こうやったらうまくいきます」
という、耳障りのいい情報を
探しているだけじゃありませんか。
もしくは、
「どのカメラがいいのか」
「どの編集ソフトがいいのか」
という情報収拾に走る。
勉強とは「情報を集めること」じゃないです。 勉強とは「実際に試すこと」。
そう、プロのように。
* * * *
【何を勉強したらいいのか】
では、プロたち・経験者たちは、
何を勉強しているのでしょうか。
答えは、
それぞれ「自分の課題」です。
照明がイマイチだな、とか。
録音の腕をもっと磨きたい、とか。
もっとうまく伝えられるようになりたい、とか。
実際にはもっともっと細かいですが、
例えばこういった感じのこと。
ここから言えるのは、
プロ・経験者たちは、 「自分の課題が明確だ」ということです。
ではなぜ課題が明確かというと、
日頃からすでにたくさん行動しているからです。
勉強すべきは、課題(改善点)。
それは、やることでしか分からない。
「まずはきちんと勉強してから
映画を作ろうと思います」
この表現は、どこかおかしいのです。
初心者は、
今目の前にあるカメラ(スマホ)を使う。
- 撮ってみる
- 編集してみる
(並べ替え・文字入れ・映像加工) - YouTubeで公開してみる
(恥ずかしければ「限定公開」でいい) - メールやラインで友達に見せてみる
これらが無料で今すぐできてしまうんですから。
とはいえ、誰かのアドバイスが欲しい気持ちも分かります。
こんな時、調べすぎてはいけません。
映画を作る答えなんて無数にあるからです。
調べれば調べるほど、違う意見が出てくる。
だからむしろ、行動を止める結果になる。
誰でもいい、
「この人がいいかも」と思ったら、
その人の言う通りにやってみる。
本を買ったら、その通りにやってみる。
その本や情報が「正しいか?」
ばかりに目が向く人がいます。
時間の無駄です。
正しいか正しくないかは、 一人一人違うんですから。
やってみてイマイチだったら、
「そのやり方は自分に合わない」
という知識と経験を身につけることができたわけです。
余談ですが、プロを目指すのなら、
失敗経験は、かなり貴重だと思っています。
実際のリアルな仕事現場でも、
予期せぬ出来事は必ず起きます。
そんな時の耐性ができていく。
どうしたらいいかというバックアッププランは、
失敗経験の中からしか生まれません。
本番でない時の失敗は多ければ多いほどいい。
(余談おわり)
* * * *
「まず、基本的なことを知りたい」
これもよく聞く言葉です。
先日、アニメの機動戦士ガンダム
についての対談を読んだんです。
※ちなみに僕は疎いです。
ガンダムが好きな人が集まって、
「ガンダムを知らない人に
その面白さを伝えるには
どこから見せたらいいのか?」
を議論していたのです。
すごい歴史があるので、
どうやったら「ガンダムの基本」が伝わるか、と。
その対談では結論として、
「人によってオススメが異なる」
というオチになっていました。
映画の作り方も、同じだと思うんです。
僕の考える<基本>は、
知り合いのカメラマンの<基本>と異なる。
また別のカメラマンの<基本>と異なる。
一方で、
本当に本当に本当に
基本中の基本中の基本を言え、
と言われたら、
「カメラは安定させて撮りましょう」
「水平を保ちましょう」
みたいな話になります。
これ、皆さんが欲しいアドバイスじゃないですよね?
これを聞いたからといって、
さあ映画を撮ろう!とはならないですよね。
しかし、
「手当たり次第試してみろ」
と言われても、これはこれで
ハードルが高く感じる人もいます。
やっぱり動けない。
それは、「目標」がないからですね。
とりあえず走れ!と言われても、
「どこへ?」となります。
課題には何かしらのゴール設定が必要です。
さて、ここからは、
僕の持論としてお聞きください。
★初心者は<技術の習得>を
目標にすべきではないです。
理由は2つ。
- あまりに果てしないから。
- 上手な人と比べて嫌になるから。
初心者はよく
「質」という言葉を口にします。
「素人がやると質が低くなるから」と。
例えば僕はフィギィアスケートに疎いです。
よくテレビニュースで見かけますが、
いいポイント・悪いポイントがさっぱり分かりません。
(転んだかどうかだけ・・^^;)
しかし、採点は細かく点数がつきますよね。
プロというのは、こういう判定が細かくできるのです。
僕は、他人の映像を見たとき、
その良いポイントや改善点を、かなり細かく解説ができます。
どうすれば良くなるかも。
それを撮った人の腕前もだいたい分かります。
初心者が「質」という言葉を使う時、
その質の中身を事細かに解説できるのなら
意味があります。
それを活かしたり、改善できるから。
しかし、そうでなければ、
「質」という言葉を使っても意味がありません。
* * * *
【勉強の目標を作る】
制作会社で職を得たいなら、
必要とされる条件や知識を明確にしましょう。
気になる映画制作会社の募集要項を頻繁にチェックする。
そこに答えがあるでしょう。
一方、
自分の作品を作りたい。
自分の作家性で勝負したい。
それなら、作ってみるしかありません。
「プロになりたい」というのは、
「名声を得たい、好きなことをしたい」
という本音を内包しています。
だとしたら、何を勉強するか。
勉強を通して何を目標にするか。
僕の考えは、
【個性とか作風】を生むこと、
です。
学生時代、
「絵を描くのはあいつだよね」
「野球だったらあいつがいれば」
みたいなもの、なかったでしょうか。
社会人になっても、
「この仕事はあの人だよね」
「こういうのはあの人に頼もう」
というのがある。
映像のプロの世界も同じ。
例えば、
「今回は時間が少ないけど撮影量が多い。撮るのが早いあの人だよね」
「今回はアート志向が強い。あの人に頼めば大丈夫だろう」
中には、
「あいつといると楽しいから」
みたいなこともある。
プロになる程、
こういった部分が際立って大切になってきます。
★売れてるプロは、 選ばれる理由を持っています。
ちょっと手厳しい意見かもしれませんが、
単に「技術力だけで勝負」しようとすると、
ライバルも多く、価格で選ばれてしまう気がします。
作業者、になっちゃうんです。
(それでもプロはプロですが)
なので、そういった
【個性とか作風】をいかに確立するか。
これは学ぶものじゃないです。
考えるものでもない。
【個性とか作風】は、
作っていくうちに生まれていくもの。
だから、学んでから・・なんて言ってると、
可能性はどんどん先延ばしになっていくだけ。
プロになる近道は、場数を踏むことだと考えます。
プロを目指してる人は、
いかに場数を踏むかを考える。
特に、ピリピリする仕事としての場数を。
そのためには、
「こうじゃないといけない」
なんて限定せず、幅広く映像を捉えてチャンスを探す。
「ミュージックビデオは映画じゃない」とか、
「フィルムで撮らないと映画じゃない」とか、
いろいろ口にする人がいますが、
単に可能性を減らしてるだけだと考えた方がいいでしょう。
僕はたまに、映画や撮影の仕事を
紹介することがあります。
すると、
「監督が誰かを聞いて考えます」
とか、
「シナリオが面白かったら考えます」
などの返答がある。
自分で対象の幅を狭めてしまっている。
言い換えると、対象を広げることで
チャンスは増えていく。
もちろんその結果、
思っていたのと違う方向に進むかもしれない。
僕だってそう。
映像の講師とか教育とか、
まるで考えたこともなかったわけです。
「教えて欲しい」と言われ、
「なんで僕が・・」と葛藤しながら、
まじめに対応し続けました。
するとやがて、
講師としてあちこちで認知された。
そうやって、
他にない【個性】が生まれ
回り回って映画の話も来るようになりました。
この段階になれば、
誰かと比較されることはなく、
仕事は名指しになります。
* * * *
場数を踏む方法は大きく2つ。
- 自分で場数を作る。
- 人の現場を手伝う。
撮影を手伝って欲しいと言われたら、
(最初は自主映画でしょうけど)
どんどん顔を出しましょう。
言い方は悪いですが、
どんな撮影現場でも得るものはあります。
多くの監督は、指示の出し方が下手。
受け身になるとそれがよく分かります。
技術の前にコミュニケーション。
単にカメラが使えても、
大勢と共有するのが難しいことも分かってきます。
自分で場数を作る、つまり、
自分で企画して作品を作りたい場合。
自分が集められる人、用意できる環境で
「作れるもの」を探してはいかがでしょうか。
こういう題材の選び方は、
メルマガとして別の機会に回しましょう。
たくさーーーん書けるので。
* * * *
さて、さんざん作ってみましょう、
と書いてますが、
もう一つすべきことがあります。
それは、
★作ったものを第三者に発信する ということ。
◎作ること(学ぶこと)
◎発信すること
これは対になっているんです。
そうしないと、
他人はあなたのことを評価できないんです。
ある日突然、
「キミ、監督をやってみないかね」
なんて声がかかるわけがないのです。
だとしたら、プロになるまでの間、
多くの人から評価されていなければいけません。
- プロになるというのは、
お金が絡むということ。 - お金が絡むということは、
企業(団体)が絡むということ。 - 企業(団体)が絡むということは、
企業(団体)があなたを判断する基準が必要ということ。 - 企業(団体)が判断する基準が必要というのは、
特定の個人の好みで選ばれない、ということ。
代表者とか、担当者とか、リーダーとか、
何かしらの役職がついた人たちが、
「この人ならいいんじゃないか」
と判断できなきゃいけない。
決裁できなきゃいけない。
判断できる基準に達していないといけない。
これは本当に難しくて。
「映像を見りゃわかる」と考えがちですが、
多くの人が同じ動画を見て
「これがいい」と判断できることって厳しいんですよ。
世の中にはそこそこ美味しいものがいっぱいあります。
その中でただ一つを選べ、というのは本当に難しい。
担当者が乗り気でも、
上司の決裁がおりませんでした、
というのはよくある話です。
だから、自分の作品、
撮った映像の「評価」を日頃から聞いておく。
自分の作品が、そして自分自身が
他人にどう見えるのか、を知る。
これまた、とても重要な【勉強】です。
* * * *
<最後に>
ぶざまにスタートすることを、
恐れないでほしいなと思います。
撮ってみて失敗しても、次は必ずステップアップします。
それは決して、寄り道ではない。
そして、やたらプロの定義を狭くして、
可能性をつぶさないでほしい。
勉強すればプロになれるのではなく、
作りながら、発信しながら、人と関わり合いながら、
プロへの道が現れてくる<確率>が上がる。
それに、プロになることだけが
すべてだとも思っていません。
映画にせよ、動画制作にせよ、
プロになったからと言って、
100%思い通りになることは、ほとんどないでしょう。
個人で仲間と好きな作品を作る。
これこそが映画づくりの桃源郷なんじゃないかとも思うのです。
僕自身、仕事で映像を作りながらも、
他の人の映画を手伝いながらも、
自分自身で好きなものを作る蜜の味は
丁寧に守り続けているんです。
3回に分けていろいろと書いてきました。
プロを目指すというテーマなので、
いつもより少し厳しい書き方になったかもしれません。
今は、動けばいろんな新しいことができる時代です。
機材もスマホがあればすでに十分。
やってみる。
この背中を押すアドバイスになればと思っています。
カルフはこれからも、
「やってみる」ための情報、
「やってみる」ための環境づくり、
を提供していきたいと思います!
▼この3回シリーズの内容に興味持たれた方へ
自分で何かしら試してみたいけど、
それでも自分では動けない、という方。
ワークショップへお越しください。
2日間で一気に最後までお連れします。