就職活動でも、動画を活用する事例が増えてきました。
いくつか記事を読んでみて感じたのは、
「内容と伝え方」がしっかり書かれているのに対し、
撮影方法はあまりに簡潔であること。
私は20年以上、映画や動画制作に関わってきました。
カメラというのは、撮り方によって役者の印象を操作できます。
編集のやり方によって、ストーリーの流れを操作できます。
自分の声を録音して聞いてみて、驚いたこともあるでしょう。
自分が思っている自分って、撮影機材を通すと印象は大きく変わるんです。
それを知っていないと、伝えるべきものも伝わらない。
撮影のことを考えた話し方・表情を意識する必要があるんですね。
- 人前で話す時に意識していること。
- 音声コンテンツを発信する時に意識していること。
- 監督として役者さんを演出する時に意識していること。
- 老若男女のインタビュー撮影を通して、普段感じていること。
上記のような視点から、自己紹介動画についてアドバイスしてみたいと思います。
この記事の目次
1.スマートフォンの設定
基本的に、デフォルト(初期設定)のままで十分です。
それ以外は、下手にいじらない方がいいでしょう。
<ワンポイント>
「グリッド(画面を9分割する線)」は水平などが確認しやすくなります。
iPhoneはカメラ設定でONにできます。
アンドロイドは機能がついていないこともあるので、なくても構いません。
また、スマートフォンは横にして撮りましょう。
プライベートでは縦で撮る方が多いでしょうが、
(おそらく)相手はパソコンで動画を視聴します。
2.スマートフォンの高さ
話すときは、目の高さ(アイレベル)にカメラをおく、というのが一番無難です。
<ワンポイント>
カメラは、アングルによって印象が変わります。
見上げて撮ると尊大に感じ、見下ろして撮ると弱々しく写ります。
・立って話す場合
どうしても三脚が必要になります。
スマートフォンと三脚をつなぐ器具も用意します。
※100円ショップで購入可能
三脚は固定できればどんなものでも構いませんが、
足がバラバラのものだけは、水平が取りにくいのでダメ。
理想を言うなら、3000円程度は出したほうが安定感があります。
一眼レフなど他でも使えますからね。
問題は高さで、180センチくらいまで高くできる三脚は限られます。
足らないときは、机の上に三脚を置いて撮影します。
ちょっと荒技ですが、養生テープを使って
壁にスマートフォンを貼り付けてしまう方法もあります。
映像自体はなんの問題もありません。
(養生テープも100円ショップに・・・)
・パソコンの前で話す場合
パソコンに近づくと、ウェブカメラが目の高さよりも下に来ます。
つまり、「相手からすると見上げたような映像になる」ということ。
そのため、少し離れて座るといいでしょう。
姿勢良く座り、顎を引きます。
また、ウェブカメラとパソコン画面を交互に見ると、
視線がキョロキョロ上下に動いて見づらい印象に。
撮り始める前に話し方を確認したら、あとはウェブカメラに視線を集中させてください。
眼鏡をかけている方は、メガネに緑色の光が写り込むことがあります。
パソコンのモニタや座る位置を調整して消えればいいのですが、うまくいかないことも。
思い切ってメガネを外す、といったことも視野に入れましょう。
3.スマートフォンとの距離感
カメラとの距離感は、相手との間合いです。
<ワンポイント>
映画では、「どのサイズで撮るか?」は重要な意味合いを持ちます。
アップで撮ると役者の感情を伝え、
引きで撮ると、登場人物の服装や状況などの情報を伝えます。
カメラが近いと、表情や感情が伝わってしまう。
それが自信があるならいい。
でも、おどおどしてるとか緊張してるとか目が泳いでるとか、そういうことがことさら強調されてしまいます。
一方で、上半身を撮るくらい離れることで、
話す様子とか身振りを踏まえた雰囲気を伝えることができます。
さてその場合、スマートフォンに手が届かなくなり、
録画ボタンを押すことができません。
撮影前に録画を押して、撮影場所に戻り、
撮影が終わってからまた移動して録画を止める、
・・・という一連の動きまで撮れてしまいます。
A:編集してから動画をアップロードする場合
後述するスマホアプリで冒頭と最後をカットしましょう。
B:編集せず撮ったままアップロードする場合
スマートフォン用のリモコンを用意しましょう。
これまた100円ショップで手に入ります!
録画ボタンを押す・止める、という動作をなくしてしまうわけです。
4.撮る場所は明るいところ
窓の近くが理想ですね。
それも真夜中ではなく、晴れた日中に。
部屋の明るさの雰囲気もまた、皆さんの印象に影響します。
真夜中に撮ると、映像の隅っこの方が暗くなり、印象が悪くなります。
(部屋の隅々までこうこうと照らせる環境なら別)
また、室内の場合、蛍光灯の真下に立つのはやめましょう。
顔の下半分にシルエットができます。
顔に(できる限り)前方から光が当たる場所、を探します。
ちなみに、皆さんの背景は、無地の白い壁がベストです。
もし背後に、台所や衣装かけ、書籍棚などが写っていると、そっちに目がいってしまいます。
5.録音に注意!!!
さて、これが問題です。
スマートフォンから離れると、声が小さくなってしまうのです。
<ワンポイント>
素人でも映画や動画作りができる時代になりました。
プロとの違いは、映像ではなく録音なんです。
見た感じは上手なのに、聞いた瞬間に「あぁ・・」となります。
ピンマイクを使うとかはハードルが上がるし、そもそも一人では大変。
(100円ショップで売ってませんし)失敗の可能性も高まります。
そのため、機材ではなく「録り方」を改善しましょう。
ポイントは3つだけ。
- 静かな場所で撮る
- 声を大きく出す
- スマートフォンに向かって話す
撮影中はエアコンやストーブは消しましょう。
強い雨の日や近くで工事中は厳しい。
決して下を向いて話さないこと。
考えながら話すことがあったとしても、声を発する時はまっすぐ前に。大きな声で。
6.自分の話し方の癖を把握しよう
人はそれぞれ話し方に特徴があります。
映像はそれらを記録してしまいますので、きちんと把握しておきましょう。
- 目が泳ぐ人は固定する。凝視ではなく。
- 目力が強すぎる人は、考えるふりをして時々そっと視線を外す。
- 瞬きをしないと気持ちが悪い。
- 口角が下がってないか注意。
- 笑うとき、片側だけ動かしてないか。これは微笑みではなくニヤリ。
こういったことは、美醜ではなく、表情・話し方の話。
つまり、修正が可能です。
<ワンポイント>
うまい役者さんは表情を操作しているのが分かります。
自分がどう考えて演技しているか?ではなく、
相手からどう見えているか?から逆算して演技しています。
就活では、「かっこよく見せる」「美しく見せる」のが目的のすべてではなく、
「雰囲気がいいな」「一緒に働きたいな」と感じてもらうのが第一ではないでしょうか。
つまり、雰囲気づくり、を大事にするのが適切なんです。
「表情」にはこだわりましょう。
動画を撮る前に、
「会うのを楽しみにしてました!」
という気持ちをイメージしてから始めるといいと思います。
7.聞き取りやすい話し方を心がける
いい話し方とは、「相手が聞きやすい」話し方です。
まず、早口は厳禁。
ついやってしまうのが、「覚えていることを忘れないうちに吐き出すように話す」こと。
これが一番ダメ。
必ず早口になります。
そして言葉を区切りながらゆっくりと話す。
全部をゆっくりにするのではなく、
緩急をつけて話すといいでしょう。
例(普通に話す / ゆっくりはっきり話す)
私が普段やっていることは、
・小さい規模の映画制作(小さく区切って)
・小予算のビジネス動画制作(小さく区切って)
・初心者の映画制作ワークショップ(小さく区切って)
です。
それぞれ説明させていただきます。
まず、「小さい規模の映画制作(小さく区切って)」。これは・・・。
8.自分の声の特徴を把握しておく
・特徴を把握しておく
- キンキン声:下げる努力をする
- くぐもっている:ゆっくりはっきり話すように気をつける
- 舌足らず:ゆっくりはっきり話すように気をつける
- つばでネチャネチャしてる:口をゆすいでから話す
・自分が発音しにくい言葉を避ける
以前、役者さんがセリフで「くき君」が言えなくて困ったことがありました。
「クックン」となってしまうんです。
そういうものを使わないように避ける。
・落ち着いて話すときの声の高さを把握しておく
部屋でリラックスして友達に話しかける声の高さ。
これを知っておいて、出せるようにします。
9.簡単に編集できるようになっておく
編集といっても、自分の目を大きく加工する、とかではありませんよ。
そんなアプリは使わない。
また、2カメラで撮影して時々自分の顔のアップを入れる、
なんて俳優のインタビューみたいな編集を求めているわけでもありません。
皆さんがすべき編集とは、
<余計な部分を削って見やすくする>
これに尽きます。
- 録画ボタンを押しにいったり、という動作をカットする
- あー、とかうー、の部分を削って見やすくする
- 最後、頭を下げて顔を上げて、いいところで止める
そんな、カット編集を軽くマスターしておくだけで十分です。
iPhoneならiMovie、アンドロイドならFimoraGoあたりが無料でオススメです。
しかし、プロ編集ソフトを使って、あまりやりすぎるのはNGでしょう。
動画を使う一番のメリットは、「その人がそのまま確認できる」こと。
カット編集だけにしておきましょう。
10.最後に。
撮影も編集も、動画制作は思いやりである、というのが私のモットーです。
「かっこよく見せる」「よく見えるように加工する」といった、
自分のためのテクニックではなく、
見る人が見やすいように頑張るのが撮影であり編集作業なんです。
いきなり本番はうまくいきません。
テストで撮ってみて、どう見えるか・どう聞こえるかを確かめておく。
動画ってなんだか面倒だな・・と感じたでしょうか。
相手のことを考えて丁寧に撮影することは、
「丁寧に字を書く」のと同じことだと思っています。
スマートフォンも含め、画質が良くなってしまった今、
ちょっとした努力がビビッドに映像に影響するんです。
逆に言うと、撮影が上手な人はそれほどいないと思うので、簡単に差がつく部分でもあると思いますよ!
頑張ってください!