いろんな人材をまとめるコツは、映画監督に聞こう!


一つの事業を進めていくには、多くの異なる能力が必要となります。

そして、それらの人材をどうやってまとめるか、がリーダーに求められます。

 

 

多くの異なった個性的な人材をまとめあげる。

これはまさに、映画監督の仕事に他なりません。

 

今回は、映画監督による役者とのコミュニケーション方法について書かれた本をご紹介します。

 

『監督と俳優のコミュニケーション術』

副題:
なぜあの俳優は言うことを聞いてくれないのか。

 

ああ、どこかで聞いたような悩みではないでしょうか。

 

映画制作というのは、まさに一つの事業を進めていくことそのものです。
プロデューサーは、資金面やプロモーション面を統括します。
一方で映画監督は、撮影を進める係です。

 

○プロデューサー=プロジェクトリーダー
○映画監督=課長

と言い換えることができるでしょう。

 

この本は、『サタデー・ナイト・フィーバー』など有名作を撮り続けるジョン・バダム監督が、
役者とのやり取り経験を体系的にまとめています。
自身が体験してきた、スタートのひやっとするやり取り。
それを面白おかしく、そしてきちんと分析してつづっていきます。

 

  • 俳優に信頼されるために
  • 感情が出せる環境を作る
  • キャスティングについて
  • リハーサルをすべきかどうか
  • 俳優を導く
  • 撮影中のマナー
  • 演技を引き出す
  • トラブル対策

 

・・・などなど、目次を見るだけでも魅力的な項が続きます。
そしてこれは、『課長職の本』として読むことができます。

 

ことを進めるために、部下を動かさないといけない。

部下に「がんばれ」「もっとやる気を出せ」と言っても通じない。

映画監督(課長)は、こんな悩みの中で業務を進めます。

 

個人的に面白かった、覚えておきたい箇所を抜粋してまとめます。

 

◎カメラやCG、編集ツールをいじるのは楽しい。
こちらの望み通りに動いてくれるから。

新人映画監督の中には、こうした技術に埋もれて存在感を消してしまう人もいる。
映画監督には俳優が必要だ。観客にストーリーを伝えてくれるのは俳優達に他ならない。

ツールやアプリに逃げない。
きちんと部下と向き合おう、ということですね。

仕事をするのはツールじゃない、部下なんだ、と。

 

◎脚本から、感情を表す表現を消そう。
「怒る」と書かれていれば、俳優はこれでもかというほど怒ってみせる。
俳優の解釈から自然に生まれる感情を活かす方が、はるかにおもしろい。

部下から生まれてくる感情を活かして仕事をしていこう、ということでしょうか。
納得できる気がします。

 

◎学生映画では誰もが監督だ。
友達が監督する作品の制作を手伝い、監督を助けようとするあまり、自分自身も監督目線で「思うんだけど」など、要らぬアドバイスをしがちなのだ。
善意であろうと関係ない。俳優に演技の話をするのは監督だけに限ること。

仕事内容について、いろんな関係者がいろんなことを好き勝手に言う状況を指しています。
著者はこれを、要らぬアドバイスだ、と切り捨てています。

部下に対して指示を出すのは上司だけに限る。
全体で一つの方向性に向かって仕事をするためには、指示系統は一本にしぼろうということですね。

 

◎すべての映画監督が、実績のある俳優を好むわけではない。
素人の役者を使う成功例には、はっきりとした共通点がある。自分自身を演じるか、あるいは自分に近い役どころであること。また、本人が毎日、長時間行っていることが、そのまま演技で求められたことだ。

実績のある俳優=できる営業マン、と置き換えられるでしょうか。
業務内容によっては、あまり自分の意見を通さない人材を集める方がうまくいくこともあるのかもしれません。

 

◎ショットの撮り方が凄いからと言って映画を観に行く人はいない。人物に魅力を感じるから行くんだよ。凄いショットを見に行こう、と観客に言わせた映画は存在しない。

商品やサービスについても言えることでしょう。

機能がすごいから買うわけでもない
そのデザイン性だったり、使っている自分が具体的にイメージできることだったり。

扱う商品やサービスの魅力は何なのか、改めて考えてみるといいかもしれません。

 

◎スティーブン・ソダーバーグの言葉。
俳優に考えろと言ってはいけない。行動しろと言うべき。することを与えるべきだ。
考えすぎてほしくないからね。それより行動をして欲しい。何かをしているところが見たいよ。
「学生時代は地味なやつだったんだ」と言って演出するより、「今の歩き方は運動選手みたいだ。別の歩き方を探して欲しい。今の歩きだと身体に自信がありすぎるように見える、と言う方がいい。

これはもう、コメントする必要がないくらい、ビジネスでも使える言葉ですね。

確かに上司はつい、「自分で考えてみろ」と言ってしまいがちです。

 

◎現場で監督を見ていれば持つべきものを持っているかどうかが分かる。それは自信だ。
セットに入ってすぐに俳優とリハーサルをする監督もいれば、クルーとショットの準備を始める監督もいる。
キャストの動きを見もしないで。

監督(課長=現場リーダー)は、見られているんですね。
その人物が自信を持っているかどうかなんて、周りからはすぐ分かるわけです。

 

◎俳優の仕事は壮大なテーマを演じることではない。アクションをすることが仕事である。
そのアクションがより集まって、壮大なテーマを作る。

部下一人一人がすごいことをやるのではなく、一人一人の仕事が集まってすごい結果に結びつける。
リーダーはこれを意識すべきですね。

 

◎シドニー・ポラックの言葉。
俳優に「セリフが全部外国語だったらどうする?言葉がわからなくても、このシーンを見て私は意味が分かるかな?」と尋ねることにしています。
理解できないなら、何かがうまくいっていないのです。

商品やサービスは、分かりやすいことが求められます。

詳しく資料を読まなければならなかったり、時間をかけて説明が必要なものはうまく行かないでしょう。

 

◎リザルト演出はよくない。欲しい結果(リザルト)だけを俳優に要求することである。
何が悪いのかと言うと、非常に曖昧な注文であると言うこと。どんな縁起をすればいいのだか、曖昧を通り越して全く分からない。
よくあるリザルト演出には次のようなものがある。
「楽しんで」「もっとうまくやって」「もっとエネルギッシュに」「変わったことをして」「悲しげに」

ジョン・フランケンハイマーの言葉。
多くの映画監督が犯す間違いは、結果的に求める表現を俳優にそのまま伝えてしまうこと。
もっと速く動いてくれ、もっと大きな声で言ってくれと言うようなことだ。
そう言わざるを得ない場合もあるかもしれないが、俳優をガイドするにはふさわしくない。
「もっとちゃんとしよう」なんて言うのもダメだね。シーンでもっと早く物事をするための理由が言えなくては。もっと急ぐのはなぜかを俳優に言えるようになるべきだ。

これもまた、そのまま当てはまりますね。
上司は「うまくやってくれ」なんて指示を出してしまいます。
これは、指示ではないんですね。

 

◎(俳優の話す)ペースやスピードの調整は、最後までとっておくべきである。
リハーサル中に考えることではない。
ペースやエネルギーを変えるのは簡単。それよりシーンの内容をつかむことが先だ。
ペースが早く感じられても、何も言わずに二、三テイク撮って様子を見るといい。
俳優はマシンではない。どんなにこちらが急いでいても、それなりの演技をするには時間がかかるのだ。
なぜもっと早く話すのか、なぜもっとテンションを上げるべきなのか。その理由を俳優に与えれば、もっと良い結果が出せる。

部下の使い方、誘導の仕方、そして結果が出るまで時間がかかることを言っています。
部下はマシンじゃない
これは覚えておくべき言葉ですね。

 

◎その役者は、殺人犯を演じないかと打診を受け、オファーを受けるべきか、悶々と悩んでいた。
人殺しの気持ちが理解できない自分には、殺人犯を演じる資格はないと思っていたのだ。

スタニスラフスキー著『俳優の仕事』には、体験したことのない感情の扱いについて書かれている。
俳優はこれまで自分が体験したことのないシチュエーションを演じなくてはならないことが多い。
ヘロイン依存症の役が来たら、ヘロインを注射して体験すべきだろうか?その必要はない。
殺人犯を演じるのに、人を殺す必要もない。
脚本にあるシチュエーションに似た体験を探せばいいのだ。できるだけ近いものの記憶を探す。
普段おとなしい人でも、怒りのあまり殺意を覚えることがあるだろう。例えば寝室で、夜中にハエがブンブン飛んでいる。イライラして新聞を手に取り、蠅を叩くのではないか?対峙したら、何も考えずにベッドに戻ることだろう。
蠅に対する行いを人間に置き換えればいい。

こう書き換えてみましょう。

これまで経験したことのない分野の仕事をしなければならないことは多い。
まず経験してからでないとその仕事ができないのか?そんなことはない。
似た経験を探せばいいのだ。

新しい仕事に詰まったら、これを思い出してみましょう。

 


以上、いくつかピックアップしてご紹介しました。

上司と部下のコミュニケーション術として読むと得るものが多そうですね。